講座レポート
食べ物の起源神話を読む レポート
posted on 2009/09/17
2009年9月5日、いよいよくくのち学舎が正式始動しました。
今日の一つ目の講座は、芸術人類学研究所の石倉敏明さんを講師とした神話研究シリーズ第2回「食べ物の起源神話を読む」。今回はゲストとして、ドキュメンタリストとして幅広く活躍する瀬戸山玄さんをお迎えしました。

まず前半は石倉さんの案内で、さまざまな地域の食べ物の起源神話を読んでいきます。
狩猟・採集に関する神話では、人間が動物から火を手に入れる過程や、わたしたちの仲間が死ぬことによって、食べ物が手に入るということについて、一見残酷とも言える神話がいくつか挙げられます。そこには「殺す」ということと自然の贈与との関係、宗教的儀式につながる神話の構造などが見えてきます。
農耕についての神話では、農作物も人間と無関係に産まれてくるわけではなく、女性の死や人間の排泄物が大地の豊穣力につながっていくことが示されています。
このように神話の構造や主題は、地域は離れていても共通なものが見出されることを確認しました。

一通り神話を読んだところで、後半は瀬戸山さんをお迎えして、神話の世界の食べ物と現代の食べ物について対談しました。
瀬戸山さんは日本の食べ物をつくる現場をドキュメントするお仕事をいくつかなさっており、そんな現場の経験から、貨幣がない時代の食料確保について、狩猟民と農耕民についてなど、縄文遺跡の話しも交えながら語っていただきました。
90分ではもったいないくらい豊かな内容で、もっとmっと神話と現代の食べ物についての突っ込んだお話を聞きたかったのですが、今回の講座はこれで終了。食べ物の起源神話第2回に期待です。

瀬戸山さんが飛騨高山の縄文遺跡で発掘した矢じり
ノグソフィア(1) レポート
posted on 2009/09/17
くくのちの講座の中でも異彩を放っている「ノグソフィア」第一回目の講座がついに開講です。
講師の伊沢正名さんはみずから糞土師と名乗り、意識的野糞を実践しています。
もともとキノコの写真家として活躍されていた伊沢さんですが、興味があったのは、みんなが注目するキノコの食についてではなく、キノコの分解について。同じ分解の過程としてのウンコにも自然と興味が移り、自然のサイクルとして土に還るべきウンコが、なぜかゴミとして不当な扱いを受けていることに疑問を感じ、野糞を実践するようになったということです。

この講座は3回に渡って行われる予定ですが、まず第一回目はウンコと同じ分解を担うキノコについてが主題となりました。
キノコは地面に生えていることが多いため、キノコの写真は上からのアングルが多いのですが、伊沢さんは昆虫の立場に立って地面スレスレのアングルから、キノコをあおるように撮影。いつも見るイメージとは違った姿のキノコが見えてきます。
また、もちに生えたカビや、葉っぱのうどんこ病など、あまり近くで見たいと思わないような分解過程も間近で撮影。すると意外にきれいな胞子や模様が見えてきます。果てはカビを万華鏡で見てみたり、伊沢さんの発想の転換、独特さが生きた写真を、くくのちにちなんで99枚見せていただきました。

一見汚い話しに見えますが、ご本人はいたって爽やかな語り口で野糞について語り、カビはくさくない、糞は汚くないなど、目から鱗の話しばかり。糞についての偏見もいつのまにかなくなっていくようでした。が、今回は入門編。次回はいよいよ「ウンコはいかにして土に還るか」を観察。伊沢さんがみずからの野糞を掘り返して、分解する過程を研究した成果をご覧いただく予定です。ご期待ください。

伊沢さんの著書。好評で5冊売れました。
都会のキノコ レポート
posted on 2009/08/10
くくのち学舎第2回目の開講日、最初の講座は「都会のキノコ」について。今回から講座の資料と一緒にバックグラウンドシートというものが配布され、講座の概要やくくのち的ポイント、参考文献などが掲載されています。
まずはキノコ初心者のために、キノコの生態について概要の講義です。
神出鬼没で怪しい姿をしたキノコ。雨が続いた日などに突然その姿を見せます。その理由は、キノコの本体は土中など人の目に見えないところにある「菌糸」であることによります。わたしたちが目にする「きのこ」とは、キノコの花または果実にあたるとのこと。

また、生物の死骸から養分を摂取する腐生菌、生きた生物に寄生する寄生菌、生物から養分を摂取するが、その生物の生命活動にも協力する共生菌という、キノコの生きるための養分の摂取の仕方が説明されました。
有機物を無機物に分解するというキノコの生態、過剰なものを分解して元の植生に戻すという、森の免疫作用としてのキノコの役割などが解説されました。

キノコの生態の講義のあとは、都会に生息するキノコについて。
一般的にはキノコは秋、というイメージですが、都会では梅雨の時期に多く見られます。また、腐生菌が多く見られるのも、都会のキノコの特徴。講師の大舘さんが北の丸公園で撮影した、都会では珍しい「キヌガサダケ」の写真などのスライドを見ながら講義が進みました。
座学のあとは、実際に街に出てキノコを探すことが予定されていましたが、あまりキノコが生えていなかったため、中止に。
また、探すのに時間がかかるため、観察会は2時間くらいは見ておく必要があるとのこと。次回は実施できるように、調整したいと思います。

講師の大舘さんの著作。写真がたくさんあって見ているだけでワクワクします。キノコへの興味は尽きません。
富山県南砺市の食べものと文化【五箇山編】 レポート
posted on 2009/08/10
くくのち地域講座シリーズの第一回目として、北陸の秘境とも言える富山県南砺市の興味深い食べ物と文化についての講座が開かれました。講座詳細はこちら。
講義は、この地域出身のジャーナリスト、千秋健さんが進行役して参加され、実際にこの地域で暮らしていらっしゃる、利賀ふるさと財団理事長、前富山県利賀村総務企画課長である中谷信一さんが詳細を説明する、という形で進行。

まずは特徴的な文化が生まれ、引き継がれてきた母体ともなる、この地域の自然環境や歴史について。現在は道路が開通して交通の便はよくなりましたが、昔は雪になると孤立するような村だったということです。一年の半分近くは雪が残り、湿気を多く含んだ雪の重みに耐えるため、世界遺産にも指定された合掌造りの家が普及しました。
そんな孤立した環境の中で育まれてきた、村の人々で協力し合う体制や、長い冬を過ごすための住居、養蚕や保存食を中心とした食文化について、詳しいお話がされました。

実際に、お茶として利用するどくだみを干したもの、薬として煎じて飲む木肌が、参加者の間に回されました。また、中谷さんの弟さんがつくっているという、五箇山豆腐の燻製、大根を干したものも試食として提供され、参加者のみなさんも興味津々です。豆腐は香ばしく、大根は味の濃いたくあんのような感じで、おいしくいただきました。

また、過疎化の進む地域を活性化するための、さまざまな試みについても紹介されました。
合掌造りの家にアートを展示する「上畠アート」というイベントや、チベットの曼荼羅を展示している「瞑想の郷」という施設もあります。
瞑想の郷については、そばを使って町おこしができないかと策を練っていたところ、そばを仲介としてネパールのとある村との交流がはじまり、そこの絵師さんの描いた曼荼羅が利賀村で展示されることになった、といういきさつがあるそうです。
また、この地域は浄土真宗が盛んなことから、今後くくのち学舎としては、この瞑想の郷を使った講座や、浄土真宗との関連についてもっと掘り下げる講座も計画中です。
最後に、東京にも出店している南砺市の「ささら屋」さんからのご好意で、この地域のお菓子「かきもち」が参加者全員にお土産として手渡されました。
第二回として、「富山県南砺市の文化」が11月7日の13時から行われます。
ご興味のある方はぜひご参加ください(申し込みは近日中に開始いたします)!

くくのち農講座(1) レポート
posted on 2009/07/24
7月18日のくくのち学舎のはじめての開講日、二つ目の講座はくくのち農講座。
これからはじまる農シリーズのイントロダクションとして、まずはくくのち事務局の天野さんから、くくのち農講座のこれからの展開について説明がありました。
最近ブームになりつつある農業ですが、くくのち的にどういったアプローチをしていくのか? 重農主義や植物の神話、農業と舞踏の関係などの思想的観点から、実際の農業の現状と、半農半Xとしての関わり方、実践やワークショップなども展開して行きたいという話。

続いて今回の講師、小平勘太さん。
京都大学農学部在学中は稲の品種改良を専攻し、その後、University of Illinois at Urbana-Champaign の大学院に在籍。帰国後はコンサルティングファームで勤務のあと、農業を新しいビジネスとして捉えなおす試みを続けているオリザ合同会社の立上げに参加しました。
まずは小平さんの自己紹介のあと、受講者の方々も簡単な自己紹介。
食について興味がある方、くくのちのはじめての講座なのでとりあえず来てみた人から、霞ヶ関からいらっしゃった方、農学部の学生、デザイナーさんなど、多彩な受講者の方々の問題意識などが語られました。

本日のテーマは、高齢者の多い専業農家に対して、若い人たちに多い半農半Xについて。本業は別にありながら、どう半農半Xを成立させていくのか、専業農家との軋轢などについて、データも駆使しながら解説されました。
もう一つは有機農法について。99%の農家が農薬を使う理由や、ほんとうに有機農法は安全でおいしいのか、生物毒と安全性についてなど、科学的な観点から考察していきます。
最後に、参加者の問題意識が高いことから、次回以降はディスカッションももっと積極的に取り入れて行くことがアナウンスされ、終了しました。
折形講座 心の折形、結びかた(プレ講座) レポート
posted on 2009/07/24
7月18日土曜日、くくのち学舎のはじめての講座が行われました。
当日は3講座開講されましたが、まず折形の講座から。
講座詳細はこちら。
講師はアート・ディレクターであり、折形デザイン研究所を主催する山口信博さん。
研究所では伝統的な「折形」をモダンデザインの観点から捉えなおした研究を行っています。

結婚式のご祝儀で使うのし袋に形だけ残っている「のし蚫」のお話をはじめとして、わたしたちの身近にある「折る」「包む」という行為についての考察が山口さんから語られます。
「折る」ことに新しい造形の可能性を見出せることを実感するため、受講者の一人一人が真っ白な紙袋を折りなおす、という実習が行われました。
前知識なしで、自由に折ってもらいます。真剣に折る受講者のみなさん。

単なる四角形の紙袋から、さまざまな形が生まれて行きます。
山口さんがおもしろい形をピックアップして紹介したあとは、なにかを入れるという目的を念頭に置いて、次の形を折って行きます。
最後に折形デザイン研究所の冊子が配られ、さまざまなバリエーションの紙袋を確認して、講座は終了しました。

最初に折形についての概要を丁寧にお話いただいた以降は、「折る」という実技を中心としたもののためか、わきあいあいとした雰囲気で進められました。
今回はイントロで、次回以降は本格的な折形の世界へ、講座は進んでいきます。
いまやコンビニにまで置いてある熨斗(のし)に折り込まれている、古代から続く贈与のデザイン。お楽しみに!
